利息制限法の制限を超える高利の借金を、長い間返済し続けていたところ、利息制限法に従って計算し直すと、すでに完済していてさらに過払いになっていることもあるということはすでに述べました。また、後述するように任意整理や特定調停などで借金整理をする場合には、利息は、原則として利息制限法に従って計算し直されます。その場合にも、すでに借金の返済は終わっていて、払い過ぎになっていることが明らかになることがあります。
こういう場合には、借主は貸主に対し、払い過ぎになっている分を返してくれ、と請求できます。というのは、利息制限法の制限を超える利息は、法律上は無効で、貸主としてはその分を懐に入れてしまう権利はないからです。過払い分は、貸主にとっては法律上の原因がない利得であって、これを不当利得といいます。借主は、貸主に対して、不当利得を返還せよ、と請求できるわけです。
過払いになっている債務者は、借金整理をして借金を減らすどころか、逆に、過払い分を貸主から取り戻すこともできます。借金整理を考える際に利息制限法の規定に従って、自分の借金と支払った額を点検し直してみることをお勧めします。
このように、利息制限法の制限を超える高利の場合は、条件さえそろえば、借主は、払い過ぎた分を貸主から取り戻せる可能性すらあるのですが、実は、1983年(昭和58年)からは貸金業法に、裁判所の取り扱いを骨抜きにするような規定がおかれました。それが「みなし弁済規定」と呼ばれるものです。
「みなし弁済規定」というのは、貸金業者が一定の要件を満たしていることを条件に、債務者が強制されずに任意に支払った利息は、利息制限法の制限を超えている部分についても、「有効な利息の債務の弁済とみなす」ことを認める規定です。これによって、貸金業者は、「みなし弁済規定によって有効とみなす」という主張・立証をすれば、利息制限法の制限超過利息を元本に充当して計算し直したり、過払いがあったときには返還したりしなくてもよいことになりました。その意味では、この規定は、借主(債務者)にとってはつらい規定です。
もっとも貸金業法では、このみなし弁済規定を適用するにあたってぱ、厳しい条件を貸金業者に課しています。この条件を満たした上でなければ、みなし弁済規定の適用はなく、業者が常に保駿されることはありません。そして、みなし弁済規定を適用する条件が厳格なためにこの条件をクリアできるような優良な業者はそれほど多くはないのが実情です。たとえば、トイチ(10日で1割)などの出資法の制限すらも超える違法な高利を支払わされている場合には、まず過払い分の返還請求ができます。
ところで、みなし弁済規定が適用される貸主に対しては、利息制限法に基づく引き直しをして不当利得を返還請求する事はできません。
みなし弁済規定が適用されるには、次の要件をすべて充たしていることが必要です。
これらすべての要件を充たしていなければ、みなし弁済規定は適用されません。また、貸付の際に利息が天引きされている場合は、これらの要件をすべて充たしていてもみなし弁済規定は適用されません。
みなし弁済規定が適用されない場合には、借主は、利息制限法に従って計算し直してくれ、という請求ができます。制限を超えた部分の利息は、元本に対する返済に充て、惜金の残額を減らすこともできません。また、計算のし直しで、元本すらも完済していることになれば、過払い分を返してもらうこともできます。
債務片にとっては不都合な規定だったみなし弁済規定が貨金貨規制法の改正によって廃止されました。これにより、払いすぎだ分は当然に貸金業者から返してもらえることになりました。ただし、みなし弁済規定が廃止されるのは貸金業規制法の改正案が施行いれてから2年半以内となっていますので、注意が必要です。
債務不存在の確認請求というのは、自分には借金がないということを認めなさい、と請求することです。借金を返済し終えたハズなのに、貸主からは請求が続いているという場合や、これまでにも述べてきたように、利息制限法に従って計算し直したら、計算上は借金がゼロになっているというような場合には、借主の方から、債務不存在の確認か請求しておくのがよいでしょう。さらに、昔の借金が時効で消滅しているというような場合も、後腐れをなくすように、債務不存在確認請求をしておくとよいかもしれません。貸主に対しては、「すでに完済済みなので、今後一切請求しないように」とか、「契約が無効なので責務は存在しない」という趣旨の文書を、内容証明郵便で出しておきます。それでも、請求を続ける相手に対しては、債務不存在確認の訴訟を提起すればよいのです。
万が一、調停が不調に終わったときには最後の選択肢として訴訟を考えておかなければなりません。
債務不存在確認訴訟のポイントは、これまでの取引経過をどこまで開示させることができるかです。返済の過程が明らかになった後は、利息制限法に引き直した計算書を作成します。もし、取引経過を明らかにする書類が見つからない場合は、業者に取引経過開示の請求をします。訴訟では、支払いの事実の立証を求められますから、引き直しの根拠として、領収書やカード利用明細書などの証拠を残しておきましょう。そして、それらに基づいた計算書を、証拠として添付します。なお、業者はおそらくみなし弁済規定の適用を主張してくる事になると思います。しかし、みなし弁済規定が適用されるための要件は厳しいですから、債権者である業者側の主張が認められないこともあるので決してあきらめないで下さい。